難しいソロ曲を暗譜で演奏するために練習したこと。本番で間違えないためには?【音大・クラシックサックス】

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上里です。サックス歴が7年目になりました。(16歳~23歳)

 

今回の記事は初心者向けではなく、ある程度速いパッセージも吹けて専門科に手ほどきを受けたことがあるという中級以上の人の為になりそうな記事です。

もっとうまくなりたい!絶対ミスしないようになりたい!けど本番では落ちてしまったり*途中でミスしてしまう...どうしよう...という時の処方箋のような感じで見てください。

 

大学時代に録音した音源フォルダを最近整理していたのですが、

「よくここまで完璧に指が回ったなぁ」と我ながら慢心感心する音源があったので、公開することにしました。

音源の曲はJacques Ibert(ジャック・イベール)というパリの作曲家の、「アルト・サクソフォーンと11の楽器のための室内小協奏曲 1楽章」という曲です。メチャ曲名長いですよね

クラシックサックス界では「イベール」や「室内小協奏曲」と略されています。

 

その演奏がこちらです。大学3年生の7月の実技試験で演奏したものでした。(ホール録音)

 

soundcloud.com

 

どうでしょうか?細かいことはさておいて、テンポ通りにミスなく複雑で速いパッセージを覚えて演奏できていると言えると思います。

 

目次

 

覚えている限りで工夫したこと

 

はじめに 

この記事では4/4拍子で16分音符が4つ並んだ速いパッセージが主な習得対象です

 

まずは大前提として、譜面指定のテンポで最初から最後のページまで"吹ける"状態であるとします。

この"吹けるようにする"というのが曖昧なので、ここでは"全ての速いパッセージをミスなく演奏できた経験がある"状態を吹けるようになったということにします。

 

サックスで速いパッセージが困難な運指の例です。音名はドイツ語表記で括弧内はロンデックス氏由来のキー表記です。

 

・G(1,2,3)→B(1,2,Ta)→H(1)

・D(8,C1)→G (8,1,2,3)

・Gis(1,2,3,Gis)→Ais(1,2,Ta)→Gis→Ais→H(1)...クレストンのソナタ3楽章にある

・Fis(1,2,3,5)→Dis(1,2,3,4,5,6,Dis)→Fis→Dis

・フラジオF→フラジオG

・低音キーB→H→Cis→Dis

 

これらはごく一例ですが、これらを習得する方法を知っていなければ永遠に本番でミスし続けることになります。

 

逆に"吹けない"は、テクニック的にどうしても指が回らない所がある、指定テンポでは音が転ぶ、指定テンポではフレーズとして演奏した時に指が回らない状態のことを指すことにします。

 

 

では"、吹ける"ようにする練習の他に僕がどんな練習をしたのかを思い出せる限りで書いてみます。

 

①遅いテンポから始めて最初から最後まで通してミスをしてはいけない練習法

 

期待される効能

全体の流れを通した【音符と指の連携】を脳に記憶させる。通しになった途端にできないフレーズが見つかる。

 

処方タイミング

・A,Bの2つのフレーズを別々で練習すればできるが、A→Bという流れになった途端できなくなっている時

・曲をほぼ完全にできるようになった後(本番前など)

 

この練習では補えない

・メカニカルなパッセージの精度を上げる

 

 

ポピュラーな練習法ですが、恐らく真面目にこれをしている人は皆無といってもいい練習法です。

この練習方法だけでは難しい箇所は難しいまま徐々にテンポを上げて練習してしまうので、4ずつテンポを上げていったからといって指定テンポで出来るようになるわけではありません。

なので普通の人ならばテンポを上げていった途中でできなくなり、通さずに苦手な部分の練習を始めて、ある程度できるようになったら通しで行き詰ったテンポで再び練習することでしょう。

 

 

なら最初から別々で練習して最後の最後にこの練習をすればいいと思うかもしれませんが、この練習は全体の流れを通して【音符と指の連携】を脳に記憶することができるため、最初にこれをすることでゴールへ向けての下地・土台になります。

また、通しでのミス発見は本番でミスする場所の予測になります。

 

 

例えばイベールの場合ですと指定テンポが120なので、テンポ68ぐらいから始めるとしましょう。

絶対に音が転ばず・間違えず・止まらず・音が引けずに演奏するのは指定テンポの半分からでも難しいはずです。

転ばず・間違えず・止まらず・音が引けずが10回やっても10回成功するようになったら、テンポを上げて練習します。ミスが多発するようになったらそのテンポで止まりましょう。

 

この練習方法では指定テンポまで辿りつくことはできませんので、指定テンポを目指すならばメカニカルな部分を更に強化する必要があります。【音符と指の連携】をより強く脳に習慣付けさせましょう。

 

 

コラム:1度ミスすると習慣がついて【音符と指の連携】が間違えた状態で脳に記憶される

ここで注意したいのは、難しいパッセージを練習する時に1度ミスしてしまうと、間違えた状態を記憶しやすくなるということです。

もし2度、3度間違えてしまうとドツボにはまって、通し練習をした際に毎回間違えるようになってしまいます。

 

そのため、間違えるくらいなら一回止まるか、ごくゆっくり練習した方がマシだということを肝に銘じておきましょう。

早く指が回るようになりたくて、焦って速いテンポでかっこつけて吹いて間違えていても一生できるようにはなりません

 

 

【音符と指の連携】について

 

【音符と指の連携】というのはこの記事で説明するためだけの造語だと思ってください。他所で言っても通じないです。

 

説明のために、サックスの場合ですがまず下記の音を [4/4 テンポ120 Gisから16分音符4つとHが四分音符] と思って練習してみてください。

・Gis(1,2,3,Gis)→Ais(1,2,Ta)→Gis→Ais→H

このパッセージはサックスにとって非常に苦手な運指になるので、1度も練習しないでテンポ通りに間違えずに吹くことは不可能に近いです。

そのため、これを吹いて指が転んでいる状態を【音符と指の連携】が悪い状態だと考えてください。

 

 

そして練習するうちに、Gis→Aisの連動では左手4,5の指を上げるタイミング右手2の指の腹でTAキーを押すタイミングが噛み合って来て、スムーズにGis→Aisが繋がるようになってきます。

その後Ais→Gisの連動を練習していると、右手2の指の腹からTAキーが離れるタイミング左手4,5の指がキーを抑えるタイミングが噛み合ってきます。

そしてAis→Hの連動で右手2の指の腹からTAキーが離れるタイミング左手3の指がキーから離れるタイミングが一致するように練習すると、パッセージが吹けるようになります。

 

この指を離すタイミングと抑えるタイミングが、脳内で想像しているタイミングと一致してきた場合には【音符と指の連携】が良い状態になっていると考えてください。

指が転んでいる、指が滑っているというのを正確に言えば、指がキーから離れる・指でキーを抑えるタイミングが自分の思い通りにいっていない状態です。

 

 

【音符と指の連携】を良くするための練習方法

この指がキーから離れる・指でキーを抑えるタイミングを掴むために、以下のような練習を僕はしました。

 

 

②...音符を逆から練習していく練習(パッセージを右から左へ演奏していく

 

③...8分音符の裏でメトロノームを鳴らして練習する

 

④...16分音符4つの並びを"付点8分音符-16分音符"2セットに変える

 

⑤...16分音符4つの並びを"16分音符-付点8分音符"2セットに変える

 

⑥...左手だけでパッセージを吹いてどの指が遅れているかに注意を注ぐ

 

⑦...右手だけでパッセージを吹いてどの指が遅れているかに注意を注ぐ

 

⑧...⑥と⑦を練習した後に両手でパッセージを吹いて両手が別々に動いている感覚を掴む

 

⑨...いつも指が転ぶ音符を見つけて、その箇所だけ息でアクセントを付けて練習する

 

⑩...自分がやりやすい異名同音に書き換える(G♭をF#に書き換えた譜面を作るetc)

 

⑪...音階名で歌う。この時自分が想像している音名と運指を一致させる

(1,pはラ#ではなくシ♭と歌う方が分かりやすい場合は1,pのラ#をシ♭と読む)

 

⑫...楽譜の段が変わる時に間違える場合は、段の最後の小節の音は完全に覚えてしまい、次の段の1小節目を見ながら前の段の音を吹けるようにする

 

⑬...メトロノームを使って練習する時に、4拍子の4分音符のテンポではなく付点8分音符のテンポでメトロノームを鳴らして練習する。(図あり)

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赤線を引かれている部分でメトロノームを鳴らしていると考えてください。青でマルされているパターンを練習するということです。

このため4分=テンポ120の曲の場合は、付点8分=テンポ150でメトロノームを鳴らして練習することになります。

非常に難しいのでこれをできるようになるためには1小節に20分かかったりすることもありますが、効果は絶大です

 

 

⑭...休符に音を入れて練習する。

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だいたいは休符の次の音を入れて練習すると転ばなくなります。

そして音符を入れて転ばなくなってきたら休符に戻すと休符が取れるようになっています。

 

 

⑮...オクターブの跳躍が入ったパッセージができない時は、オクターブを揃えて簡単な状態にして練習してみる

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これも非常に難しいフレーズです。オクターブが上がった後にもたつくことが多いでしょう。

そこで、赤丸1つめのファ#を1オクターブ上にします。

赤丸2つめのミを1オクターブ下げます。

そうすると、この2小節では左手親指を使うのは2回だけになり、他の指の運動に神経を注ぐことができます。

そうしてオクターブを変えた状態ならば割と簡単に吹けるようになるはずなので、できるようになったらオクターブを戻して練習してみると、吹けるようになっています。

 

⑯...半音階のアルペジオのようなフレーズで、指は回るのに頭が混乱する場合は⑪を練習する。頭の中の音階のイメージと実際に指で抑えている音を100%一致させる。

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僕の場合は、上のフレーズは「ファラソシソシラド シレシレドミドミ」と歌えるようになったら吹けるようになりました。

つまりは「#ファ-ラ-ソ -♭シ-#ソ-シ-ラ-ド ♭シ-#ド-シ-レ-ド-♭ミ-#ド-ミ」のように一部を異名同音に替えて読んでいる訳です。

吹奏楽関係の指導者だと「階名は正しく読みなさい。#ラのことを♭シと言ってはいけません」と言う人が多いですが、速いパッセージではそんな悠長に考える時間はありません。

脳内でより速く音符を処理しなければいけないので、如何に自分にとってやりやすい方法を見つけるかが重要です。

 

 

⑰...MIDIでカラオケ音源を作り、それを聴きながら練習する。

これはDTMができる人限定ですが、100%正確なテンポで伴奏を刻んでくれるカラオケ音源があるなら使わない手はないです

 

なぜかイベールなど、一部のクラシックの独奏曲はMIDI音源が落ちていることがあります。

soundcloud.com

 

これは本当にたまたま拾ったMIDIなのでラッキーでした。

これを聴きながら通し練習などをすることで、とにかく脳に正確なテンポを刻むことができたように思います。

究極、自分でこのような音源を作れば一番なのですが・・・

 

⑱...替え指(pキー)を使うフレーズでどれだけ練習してもミスしてしまう時はホームポジションを意識する

サックスでpキーを使う時は、左手人差し指で1とpキーを同時に抑えていますよね。

この時の左手人差し指はホームポジションからズレているということを自覚しましょう。

ホームポジションから指が1つズレているということは、実は腕自体の位置も微妙に動いています

pキーを使ったフレーズをどれだけ練習してもダメだった時は、pキーを抑えるのをやめて1キーだけを抑えて練習してみましょう

(演奏している音が変になりますが、聴こえる音の変化<<<<指の変化なので気にしすぎないようにしましょう)

それで改善された場合は、pを使うタイミングと外すタイミングを16分音符単位で厳密に決めておきましょう。

 

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縦線の右隣の音符を吹く時に、「pの位置に指を移動させる」ということをしっかりと楽譜に書き込んでおきます。

そうするとだんだんホームポジションとp時のポジションの微妙な違いが分かるようになるので、それを自分の中で明確にさせましょう。そうすればできるようになります。

 

 

⑲...両手の軸指を意識する(親指を意識的に押し出して1,2,3,4の指の分離を良くするetc)

サックスでは左手はサムレスト、右手にサムフックがあります。

左手が思うように分離しないような感覚で指が回らない時には、サムレストを前に少し押し出すイメージでほんの少し力を入れてみてください。

力を入れすぎると逆に指が硬直しますので、変化を感じるほどほどにしましょう。

 

右手親指のポジションは無意識に自分がやりやすい位置に置いていると思いますが、

右手親指は支点の役割だけでなく、指先とキーカップの指貝までの距離を決めるアジャスターでもあります。

指先とキーカップの指貝までの距離が近いと、4,5,6,E♭,C,F#のキーを押す動作は機敏になりますがC4,Ta,Tcなどのサイドキーの操作が難しくなります。

もし右手サイドキーを使ったフレーズが上手くいかない時は右手親指のポジションを再確認しましょう。

 

⑳...左手の薬指がキーから離れるのが遅い場合、左手首の角度を自分から見て時計回りに15°~30°ほど回した状態にする

こうすることによって左手4,5の指が伸びるため、キーから指を離すまでの距離が若干短くなることによって速度が上がります。

 

㉑...左手の薬指がキーを押すのが遅い場合、左手首の角度を自分から見て反時計回りに15°~30°ほど回した状態にする

こうすることによって左4,5の指がキーカップと近くなり、キーを抑えるスピードが速くなります。

 

 

練習で100%できるようになって初めて本番で90%成功するようになる

長々と書きましたがまだ説明が足りていない所が多いので、今後ぼちぼちと更新していきたいと思います。

あくまで「方法」を書いているだけなので、これを自分の曲や演奏スタイル、基礎の到達度に応じて練習量を変えることになります。

ここに書いた方法で速いパッセージの精度が格段に上がった!という方がいらっしゃったらぜひ聞かせて頂きたいです。